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隣国とタイとの比較 2020

タイ進出における必読の基本情報

ASEAN諸国とタイとの比較
 ~果たしてどの国が進出し易いのか?~

※本原稿は、2015年時の既存のレポートをアップデートし、加筆・修正を加えたものになります。(2020年2月24日-現在)

これから、初めて海外進出を考えるに当って、どこの国にすればいいのかは、非常に難しい問題である。
筆者は、永年タイで生活してきており、その観点からタイは非常に住みやすい国ではあるが、では、ビジネスがし易い国かと言えば一概にそうとも言えないのが現実である。

先ず、タイとベトナム、インドネシアがASEAN3強でと言える。強みからいえば、タイは自動車産業の集約と圧倒的な日系企業(約8,000社)進出(製造業で3,000社を超える)と、生活のし易さが言える。 次に、インドネシアは、巨大なマーケット2億7000万人を抱えており国策で6%の成長率を毎年維持するなど成長力の高さが魅力である。最後にベトナムは、2019年に約9,600万人の人口となり人口減少に転じているものの若い世代が多く、ASEANの中では勤勉さや学習能力が高く、協調性や、打たれ強さ、芯の強さがあるのがベトナムの強みである。
 


タイ・アソーク周辺の高層ビルと町並み


しかし、逆に弱みをフォーカスして見れば、タイは賃金の高騰と高齢化社会に足を突っ込み始めており、人口不足の為、近隣国からの出稼ぎ労働者が居なくては成り立たなくなっている。 (2014年6月のクーデター時には、それら出稼ぎ労働者が労働許可がないので国外退去処分になるのでは?との憶測から、一斉帰国が始まって、軍政府はそんな事はないと火消しに大あらわに成ったのは記憶に新しい)また、交通インフラは貧弱で大渋滞が日常的に起こり、そればかりか、2011年のタイの大洪水では治水インフラの整備が必要にも関わらず、またもや、 総合治水対策の予算が軍政府によりペンディングとなってしまった。軍政府は、経済最重視の政策を打っているが選挙に拠らない政策がどうなるのか誰も分からない。
 

ベトナム・ホーチミン市 レタントン通り高層ビルなど
インドネシアに関しては、タイの最悪の交通インフラを超える圧倒的な貧弱さで、スディルマン通りに地下鉄が開通したが、道路状況は酷く、既にジャワ島にある自動車の数が、道路の面積を超えたと言われる程酷い。筆者はタイ(バンコク)、 インドネシア(ジャカルタ)、ベトナム(ホーチミン)と比べた場合、一番駄目なのが、インドネシア、次にタイ、そして、これから酷くなるベトナムの順に、交通インフラの脆弱さをランク付けしたい。 また、インドネシアは、労働よりも、労働運動の方が盛んで、以前、出張に行った際には、プロガドゥン工業団地内のヤマハ・ミュージックさんの工場前でデモをやっているとおもったら、1月後にも、 まだデモをやっていると言うくらいデモで酷くなっている。賃金の上昇も、最低賃金が去年まで毎年40%も3年続けて上がるなど、インドネシアはタイを超えたのだから、 タイを超える最低賃金で良いはずだ、と言った声からタイに迫る賃上げ圧力が凄い国である。(※本当にタイを超えたのかどうかは、分からないが、タイの最低賃金を超えたら、次には、 マレーシアの最低賃金よりも高くて良いはずだ、と成るだろう)
 


インドネシア・ジャカルタ プラザインドネシア周辺
最後にベトナムであるが、ベトナムの恐ろしさは、共産主義国家と言う事が一番のネックである。以前、新聞に記事が乗っていたが、ある政策が発表されて、 今後は外国メディアが取材を行う際には毎回政府に申請をしなければならない、と言った事が突然決まったり、自国・他国に限らず通貨持ち出し制限が厳しかったりと、 資本の流動性がない。つまり、ベトナムに投資したお金は、ベトナムで再投資するしかなく、投下資金を回収できないなどがボトルネックになる。また、インフラの整備はインドネシアに負けず劣らず、 進まない。共産主義の為、土地を早く収用して開発を進めれば良いのに、それが出来ない所に限界がある。

以上、どの国も一長一短であるが故に、進出には慎重を期さなければならない。

もし、圧倒的に進出が有利な国があるならば、誰も比較検討などせずに、そこに進出すれば良い。それが、だが、ASEAN諸国を見てもどこも魅力的なメリットが書かれているが、 嘘ではないが、話半分に聞くくらいが良いだろう。現実はそんなに甘くはないからだ。(筆者の様にタイ進出を本業にしていると、 誰でもいいから進出をしたらバラ色の未来がまっていると甘言し、進出させたい所だが、ちょっと冷静に考えて欲しい。そう言って騙す輩のなんと多い事を。騙される前に、例えば、 タイに駐在事務所をおいている銀行さんなどに相談に行くと少なくとも怪しい会社かどうかスクーリングして紹介してくれるので良いだろう)

そして、タイに進出を検討しているのであれば、筆者が日々感じでている注意点を少し挙げてみたい。 タイに初めて進出する場合で、繊維産業(手工業的な業種)に関しては、先ず、止めておいた方が無難である。タイでは既に繊維産業などは撤退・移転を考えている業種であり、 今、進出をしたのではもう遅い。繊維産業(手工業的な業種)であれば、ミャンマーか、バングラデシュ辺りが良いかもしれない。
 


ミャンマー・ヤンゴン市内 町並みや、お寺


そして、機械加工の分野にてタイに進出を行うのであれば、既に多くの日系企業が進出済みである事を考えないといけない。また、今後はローカル企業がライバルとして台頭してくる事を考えて、 コスト勝負を余儀なくされる事も考えないとタイに進出しても思いの外、あてが外れてしまったと言う事にもなりかねない。
以前、ある製造業の企業さんと話をした所、タイへの進出はコストダウンが目的ではなく、マーケットを狙いに行く為の物であるから人件費の高騰は関係ない。既にロボットを多数入れているが、 これからも、機械化を続けていき、コストでマーケットを狙っていく、と話していた。
また、違う製造業さんのケースでは、最低賃金が300バーツ/日(当時約900円)になるまだ前のバンコク地域で215バーツ/日の段階で、既に当社では、300バーツ/日でも利益が出る体制になっており、 400バーツ/日も想定に入っている。それでも尚、工場の減価償却も終わって利益が出せる状態になっている。他社さんより1歩も2歩も進んでいると自負している、との事であった。 タイは人件費が安いから進出する、と言うのではちょっと遅いと言える。(2020年時点の最低賃金は、バンコク地域で331バーツ/日。月換算で9,930B=35,800円)
 

タイで流行っている日本食レストラン
話は変わるが、製造業の進出ラッシュも3次も後半で、今、多いのはサービス業の進出である。飲食店は基本的に日本食のブームが続いている為、常に一定の進出企業は絶えないが、 その影で店を畳む企業も少なからずあるので、決して商売自体が楽とは言えないが、追い風であるのは確かである。閑話休題。

海外への進出で、一番楽なのがタイだと言われている。(楽だからと言って誰しも儲かる訳ではない)会社設立等に置いても時間は掛かるが難しいと言う訳ではなく、 タイ人の従業員も自分で技術を身につけたので、では独立しよう、となる訳でもない。そう言った意味では、中国などと比べると非常に楽だと言える。しかし、タイも海外進出である事には変わりなく、 言語は、タイ語を使うなどの難しさがある。(一般のタイ人は英語が話せない事が多いので)

そこで、タイに進出する理由を海外進出の出島とする方法が一つである。タイの工場を道場と捉えて、タイのスタッフと共に会社を大きくしていく。そして、タイでのある程度の成果を得られたならば、 今後は、より大きなインドなどの市場を狙っていく。そう言った進出の仕方であれば、タイへの進出はより有意義なものになり、今後の海外拠点設立にあたってのバックアップ拠点としての役割も果たせる。 (タイ単体ではなく、ASEAN攻略の拠点としても考えられるだろう)

海外進出にあたっては、答えは無いが、果たしてどうすれば、10年先、20年先を生き抜く事が出来るか、タイだけでなく、次のステップを考えて、進出先を選んで欲しい。